交響曲の作曲で有名なグスタフ・マーラーが、1993年から96年にかけて滞在し、主に第3交響曲を作曲したのがオーストリアのアッターゼー湖畔のシュタインバッハにある作曲小屋だ。今回、今は小さな博物館兼記念館となっている建物を訪問したので沢山の画像を使って紹介します。
グスタフ・マーラー Gustav Mahler とは
マーラー(1860年7月7日 ~1911年5月18日)は、主にオーストリアのウィーンで活躍した音楽家。あのウィーン・フィルハーモニーの音楽監督・指揮者として名を馳せ、10の交響曲や声楽曲などを作曲している。作曲した作品については彼の没後に世界中で評価され、マーラー・ブームが巻き起こったので今や著名な大作曲家として有名である。
私は大のマーラーファンで、9つの交響曲と未完成の第10番交響曲全てで各20から30種前後の演奏を集めて聴き比べしている。特に大好きな第2番は40種ほどの演奏を持っている。指揮者では、クラウス・テンシュテット、レナード・バーンスタイン、ガリー・ベルティーニ、小澤征爾がマーラー演奏では大好きだ。心を揺さぶられる名曲と名演がいつも心を豊かにしてくれる。
そんなマーラーの交響曲の中で、100分程の演奏時間を誇る雄大な第3交響曲を作曲したのが、今回のテーマであるアッターゼー湖畔の作曲小屋ということで、以前から気になっていたのだが、ようやく訪問のチャンスを得たので、レンタカーを使って訪問しました。
アッターゼー湖畔シュタインバッハの位置
アッターゼー湖(アッター湖とも云う)は、音楽の古都ザルツブルクから東に50㎞程の位置で、車であれば1時間ほどで着くのだが、私が行った時は湖の手前数キロで工事による通行止めがあり、少し戻ったうえで北側から湖を大きく迂回するはめになってしまい2時間近くもかかってしまった。途中で工事の告知看板があったのかもしれないが、全く気付かなかったので、工事現場でUターンすることになってしまったのだ。目指すシュタインバッハは、縦長の湖のザルツブルクからすると対岸にあるため、迂回すると結構な距離がある。でも、山と湖で風光明媚な観光地なので気持ち良く走ることができたのは幸いだった。
アッターゼー湖の右岸を南下した時の風景が、上の画像だ。美しい景色が続いており、マーラーと同世代の天才画家グスタフ・クリムトがこの地で何作か作品を残しているのが納得だ。もっとも、クリムトの作品については、帰国してから湖について調べているときにわかったことなので、もっと事前に調べてから行けばと後悔したものだ。この湖畔沿いの道だけでも13㎞以上あったので、結構時間がかかったように感じた。
車での目的地が、シュタインバッハのフェッティンガーホテルだ。このホテルが作曲小屋を管理し、小屋の鍵を貸してくれる拠点だからだ。
フェッティンガーホテルのフロントにいた女性のスタッフがとても感じの良い方で、このホテルの雰囲気の良さを感じることが出来た。この地では、毎年マーラー・フェスティバルがあるので、ぜひいつかこのホテルに泊まってフェスティバルに参加したいものだ。
なお、鍵を借りる際に、「貴方と同じ日本人のカップルが先に作曲小屋に行っているので、鍵が開いているかもしれないけど、戻ってくるかもしれないからこちらの鍵を渡しますね」と、この写真の可愛い鍵を貸してくれた。丁度、小屋への道でカップルに出会ったので、「こんにちは、日本の方ですか?」って聞いたら全然言葉が通じず、英語も通じることなく、何やらバツが悪そうに中華系の言葉を話されていた。まあ、日本人への成りすましってやつですね。悪さしなければ別に構いませんが。こちらは、日本人のマーラーファンと聖地の一つでお会いできると思ってワクワクしていたので、残念でした。
フェッティンガーホテルから作曲小屋への行き方
さて、何気にフェッティンガーホテルから肝心の作曲小屋までがちょっと分かりにくいので写真付きで案内します。
私は、ホテルを出て左に行き、そのまままっすぐ進んでしまったので、少し迷ってしまったのだ。
そのまま道なりに歩いて行くと、右手の木の幹に「Gustav Mahler」と記載された木の看板が目線に掲げられているのがわかる。そこから右手を見ると作曲小屋が見える。
ホテルからの距離は、200m程度だった。それにしても、小さな小さな小屋だけど、実際に目の当たりにした瞬間、感動が広がった!ついに来たぞ。ここでマーラーが第2番の一部と第3番を完成させたのか!と。
いざ作曲小屋へ
ついに写真でしか見たことのなかった小屋に到着。後ろのアッターゼー湖の青と空の青が美しく、赤屋根と白壁の可愛い小屋が映えている。
ワクワクしながら窓から覗くと、そこには真ん中に古びたグランドピアノが。そして、ピアノの上には楽譜が置いてある。逸る気持ちを抑えて開錠して中へ入った。
真ん中のグランドピアノと共に、窓辺の景色が目に飛び込んできた。とても印象的だった。壁には、マーラーの足跡を辿ったミニ博物館としての機能があり、あとはマーラー・フェスティバルの案内やコメント用ノートなどがあるだけだった。ユニークだったのは、ドアを開けた瞬間に交響曲第3番の第一楽章が大きな音で鳴り出したことだ。ホルンの勇ましい音で始まる曲を聴いて、気分は一層盛り上がった。
私の第一印象は、この画像のとおりだ。湖の青、木々の緑が額縁の絵のようだった。そして、ピアノをはじめ、室内は100年以上前の昔になって色が消えていた。これが自分の心象風景だ。
ふと我に返ると、世界がカラーに戻っていた。そんな錯覚に陥っていたのが面白い。第3番が流れていたせいで、没入感が強かったのかも。ちなみに、ピアノの上の楽譜は、交響曲第3番のペラペラのコピーだった。
イベント案内のところにあった案内希望欄に名前とメルアドを記載したので、毎年マーラー・フェスティバルの案内が送られてきます。いつかの参加を夢見ています。
ちなみに、このアッターゼー湖の後、マーラーは1900年~07年にかけてヴェルタ―湖畔のマイアーニッグの小屋で、交響曲4番と5番から8番の完成などを行い、1908年~10年にかけて、イタリアのドッビアーコという牧場の小屋で、交響曲第9番・10番と大地の歌を作曲しており、それぞれの小屋が現存しているようなので、マーラーファンとしてはぜひ訪問してみたい。
と、シレっと書いているが、実は後にこの場所を調べていた際に、ヴェルタ―湖はこのアッターゼー湖に行く前日に車で通っていることが判明。しかも小屋のすぐ近くを知らずに走行したうえ、その先で車を止めて、湖上に浮かぶように見える美しい教会を望遠で撮影していたことが判明!もの凄い失望感と悔しさが溢れ出ているのだ。旅が終わってから気付いても後の祭り。事前に関連情報を徹底的に集めるべし!
旅の教訓でした。皆様もお気をつけください。