絵画「夜のカフェテラス」は、フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホの超有名な作品の一つだ。
これはゴッホが南フランスの歴史ある街アルルに住んでいた1888年に現地のカフェを描いた作品だ。2023年からだと135年も前の話だ。
そのモデルとなったカフェ、その名もカフェ・ファン・ゴッホが未だに営業しているという情報を得て、南フランスの旅の途中に立ち寄ってみた。(訪問時期:2019年8月)
作品「夜のカフェテラス」とは
絵画「夜のカフェテラス」は、1888年9月にゴッホが描いた作品だ。
ゴッホはこのアルルの地で多くの作品を残しており、これもその一つである。
ゴッホは当時イーゼルを立ててこの広場の一角に立って描いていたそうだ。
黄色いカフェと青い街と青い空が印象的なゴッホの中でもとりわけ有名な作品だ。そのモデルとなったカフェが今もそのまま残っているとは非常に興味深い。
ちなみにこの作品は、ゴッホの母国オランダ・ヘルダーラント州エーデのデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内のオッテルロー村にある美術館で、ゴッホに関するコレクションではアムステルダムのゴッホ美術館と並び、2大ゴッホ美術館と称されるほどの規模を有する。そのコレクション数はなんと87点にも及んでいる。
筆者はまだ行ったことが無いので、ぜひ行ってみたい美術館の一つである。
アルルのモデル地へ
私は南フランスはプロヴァンス地方の最も美しい村を撮影するために、レンタカーでその地を巡っていた。
その途中にこのアルルに立ちることが出来たのだ。
当日は、レ・ボー=ド=プロヴァンスの黄昏時の撮影を終えてから、約20km程車でアルルにやってきて、ローマ時代の遺跡である円形闘技場の近くの路上駐車スペースに車を止めた後、歩いて目的のカフェに向かった。
立派な円形闘技場に見とれてしまったが、先のカフェへ。
闘技場に沿ってしばらく進んでから旧市街の路地へ入っていく。
路地に入るとかなり薄暗く、治安は大丈夫かと少し不安にもなったが、落ち着いた雰囲気が素敵だった。歩いたのはせいぜい5~6分程度ですぐにカフェのあるフォリュム広場に着いた。
モデルのカフェはこれだ
すると、広場の周辺にカフェが並んでいるなか、燦然と黄色に輝くカフェが目に入った。
これだ!!
絵のまんまではないか!?
これは驚きだ。事前に様々な写真は見ていたが、夜に実際にみると変わりがないことがよくわかる。
いろんな意味で感心してしまった。
何せ130年も前の作品のモデルがほぼ同じ様子で現存しているのだから。
近づいて撮影するとより作品の雰囲気に近づいた。
ゴッホの作品のように縦にして撮影するとこのようになる。
地面が石畳のようなものから、コンクリートに代わっていることと、ゴッホ独自のぼんやりと星?のような光の浮いた紺色の空を除けばほぼ同じだ。
右側の木の葉っぱまで同じように存在している。
よく見ると、カフェの上層部は黄色ではなく、青白く描かれているので、少し違うと判断できる。
とは言え、カフェの丸テーブルやカフェにいる人々、カフェの前を歩いている人々などの様子が同じようで、何とも不思議な感覚に陥った。
作品と並べるとこんな感じだ。実に面白い。
見入っていると、楽し気な酔っ払いグループに軽く絡まれた。フランス語で何を言っているのかわからずに残念だったが、楽しそうだったのでこちらも不快感はなく、楽しい空間を共有できたことが良かった。今も昔もこのようにカフェ前は賑わっていたのだろう。
印象深いモデル地訪問だった。
この作品については私自身、実物を観たことは無いのだが、これに触発されてぜひ観たくなってしまった。
なんとかクレラー・ミュラー美術館に行ってみたいものだ。
ちなみに、この「夜のカフェテラス」は、2026年頃に福島の県立美術館での「大ファン・ゴッホ展」で来日予定とのこと。
モデル地のロケーション
このアルルにあるカフェの地図を参考までに貼り付けておこうとGoogle mapで調べていたら、とんでもないことに気づいた。
このカフェがなんと閉業しているのだ。
これ程長年営業してきたのに。。。 やはり、コロナの影響だろうか?
残念でならない。
カフェのウェブサイトを見ると、まだサイト閉鎖はされておらず、ゴッホの絵の下に、”Dear guests, we would like to inform you that our restaurant is closed”(お客様へ、レストランはお休み頂いております。)と記載されていた。
このclosedの意味するところは完全な閉業なのか、休業なのか?だとすると復活はあるのだろうか?
ウェブサイト自体が消されていないので、復活を期待している。
Google mapではストリートビューで今も当時営業中のカフェや広場の画像を見ることが出来るので、参考になればと、この下にマップを貼り付けておくことにする。
営業していなくても、黄色い造りのカフェの建物と壁の色自体が残っていれば、当時を偲ぶことができるはずだ。
ゴッホファンならずとも、アルルにお立ち寄りの際は、ぜひ訪れて頂きたいスポットだ。